『納涼祭』
         
 
「お知らせが行っていると思いますが、待機終了した方々はアカデミーに来て下さいね〜。」

真夏の照りつける太陽が西に傾いた頃、
が待機所にやって来てそう告げると、台風の様に去って行った。



「カカシは何をやるか、から聞いてるの?」

紅がアスマの隣に座りながら、付き合い出して三ヶ月になるの彼氏に問い掛ける。

「それがね〜、教えてくれないんだよね。本番までのお楽しみだって。」
「やっぱりね。でも、張り切ってたわよ〜。」

紅はクスッと含み笑いを浮かべた。


【8月〇日。アカデミー主催、肝試し大会を開催いたします。】


そんな張り紙がされたのが三週間前。
仕事の無い者達は、警備役、誘導役、そして脅し役に振り分けられる。

のヤツ、ぜってー任務の振り分けに加担してるよな。」

アスマが紫煙を揺らしながら笑い、

「多分そうでしょうね。」

紅も待機所に居る面々を見回しながら笑った。


は医療忍者。
そしてアカデミーの保健医でもあり、時間がある時は受付業務もこなす。
二人の想像通り、肝試し開催が決定してからは、着々と準備を始め、
脅し役として目星をつけている忍の任務は、影ながら調整済み。

「たしか卒業生も、ある程度の年齢までは招待されているのよね。7班の子達は来るの?」
「ま〜ね。サスケはくだらない・・・って悪態ついてたけど、サクラは乗り気だぞ。
 ナルトはな、サクラがが来るから絶対来るでしょ。」
「うちの子達も来るって言ってたわ。アスマの所は?」
「ああ。めんどくせーってぼやいているヤツと、出店がメインのヤツをイノが引っ張ってくるだろうよ。」
「それより紅、俺達が何やらされるか知ってんの?」

カカシは愛読書をを閉じて、ポーチに仕舞った。

「まぁね。でも機密事項扱いなので教えられません。」
「あ、そう・・・。」
「もうすぐ分かるわよ。」

三人が席を立つと、待機所の扉がガラリと開き、

「お〜い、皆まだ此処にいたのか!早く行くぞ!!」

と、緑のスーツを着た上忍が、白い歯を光らせ親指をアカデミーに向けていた。

「はい、はい。そう、焦らなくても行きますよ。」

カカシが言うと、夜間待機の者達に挨拶をした上忍師達の姿が夕暮れに染まった。

 


「あ〜来た、来た。みんなお疲れ様。今日はよろしくお願いします。」

はぺこりと頭を下げ、アカデミーに着いた四人に声を掛けた。

「各教室の扉に名前の書いた張り紙がしてあるので、そこで着替えて待っててね。
 後で特殊メイクの担当が伺いますから。
 あっ、カカシはこっちね。」
 
に招かれカカシが連れて来られたのは、保健室。

「カカシのメイクは私がやるからね。先に着替えてv」

満面の笑みを浮かべたは、保健室のベットの上に置かれた衣装を指で指して。

「着替え終わったら教えてね。」
「ああ・・・。」

衣装を呆然と眺めているカカシを尻目に、勢い良くカーテンを引いた。


―― 八月の真夏に、この衣装とはねぇ…。
    流石の俺も、この時期は半袖着てたりするわけよ。
    口布は外せないんだけどね〜。
    ま、心頭滅却すれば火もまた涼しって言うけど、
    成功報酬貰わないとねぇ…ちゃん。


カカシは意味ありげな笑いを浮かべ、用意された衣装に着替えた。

カーテンの隙間から覗くと、はメイクの準備をしていて、
全くこちらに気づく気配が無い。
 

―― 前金を頂戴いたしますか。


カカシは瞬身での元へ移動し、背後から抱き締めると首筋を舐め上げた。

「ちょっと、カカシびっくりするじゃない!!」
「この衣装を着て、美味しそうな美女が目の前に居たら、こうするでしょ。」
「成りきるのは本番だけでいいからー。それよりちゃんと見せて。」

が振り返ると、黒のタキシードに黒いマントを羽織ったカカシの姿。

「うわ〜やっぱり、いい!!カカシドラキュラ最高、かっこいい。がんばった甲斐があったよ〜」

うん、うん、と首を縦に振り、満足気にカカシを見つめるを、カカシはフワリとマントの中へ隠した。

「目覚めたばかりのドラキュラは空腹なんでね。」

カカシはの顎を持ち上げ、何か言いたげな唇を塞いだ。
生き血ではなく、甘い唇を堪能したカカシの唇は、ゆっくりと滑り落ち、首筋に軽く歯を立てる。
ビクリと体が震え、カカシのキスに酔っていたは我に返った。

「ご馳走様。まだ、全然足りないけどね。成功報酬はきっちり頂くよ。」
「え?アカデミーからはそんなの出ないよ。ボランティア、ボランティア。」
「誰がアカデミーから貰うって言った?からに決まってるでしょ。」
「え〜〜。」
「ま、任務終了までに何にするか考えておくから。」
「はい、はい、分かりました。」

全くこういう所は言い出したら聞かない子供みたいなんだから・・・とは小声で呟く。

「何か言った?」
「いえ、いえ、それよりもメイクね。」

カカシを自分の椅子に座らせ、マスクを被せると、カカシの素顔が分からないように特殊メイクを施す。


―― ん〜勿体無いなぁ・・・。
    素顔のままだったら、もっとカッコいいのに・・・。
    でもそのままっていうわけにもいかないしね、カカシの場合は。
 
 
「ねぇ。」
「う〜ん、何?」
「俺以外の奴らって何やるの?」
「知りたい?」
「まあね。」
「う〜んと、ガイはキョンシーでしょ、アスマは狼男、トンボはミイラ男、イビキはフランケン、ゲンマはサタン。」
「なんかゲンマ君カッコいいんじゃないの。」
「カカシも十分カッコいいから。」
「で、女性陣は?」
「紅がお〇さん。番町皿屋敷。肝試しの取よ。あとはね・・・。」
「あとは?」
「紅が一人じゃ嫌だって言うから、私が雪女。」
 

―― へ〜雪女ねぇ。


「じゃも着るんだ。衣装。」
「うん・・・裏方に徹しようと思ったんだけどね。」


―― ちゃん〜報酬決まったよ。
    今晩はその衣装でねv

 
その夜が、真っ白な着物を身に纏い、すぐカカシに脱がされたとか、そうでないとか・・・